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土壌や水質の検査・管理に活用される「phメーター」の使い方と注意点

phメーター(ph計)は、対象となる溶液の酸性・アルカリ性の値(イオン濃度)を測定する機器です。

定期的な校正作業を行えば、溶液のphを正確に計ることができるため、学校や研究所での実験から一般企業まで幅広い分野で使用されています。

この記事では、phメーターの概要やphメーターが使われている業界、重要性について紹介します。使用上の注意点や使い終わったあとも紹介していますので、計器を選ぶ際の参考にしてください。

phメーターとは?

phメーターとは、酸性・アルカリ性(塩基性)のレベルを数値化するための測定機器です。

phとは溶液の水素イオン濃度のことで、メーターの指標は1〜14までの15段階となっています。中間地点の7が中性を示します。

ph計・ph測定器とも呼ばれ、測定用の探針を対象の溶液に浸けると値が表示されます。手に持って使えるハンディタイプやスティックタイプのほかに、卓上タイプのメーターも販売されています。

phメーターの使用方法は、取扱説明書のとおりに行います。測定後は正しい手順で保管する必要があり、容器・槽・バケツ・中性洗剤・ガーゼ・水道水(または純水)・保存液といった物もあわせて準備しましょう。※

※参考元:東京都下水道局「pH 電極の洗浄方法 (例)

phメーターを使う業界とは?

phメーターは、溶液を扱う産業分野に欠かせない計測機器です。ph測定が行われる業界・業種は次のとおりです。

【phメーターを使う業界】

業界 使用目的
農業 土壌・農業用水のph測定
畜産業 家畜用飼料や家畜の血液のpH測定
環境業 水質のpH測定
製造業(医薬品) 医薬品・化粧品の製造工程におけるph管理
製造業(食品) 溶液や食品・飲料のpH測定
製造業(金属) 溶解液のph調整
製造業(パルプ・紙・紙加工品) 紙料のph管理
製造業(プラスチック) 高分子化工程におけるph管理
製造業(石油・石炭) 脱硫工程におけるph測定
製造業(化学) 化学製品の製造工程におけるph管理
水産業 漁場の水質測定
建設業 素地面の確認におけるph測定
工業(繊維) 繊維製品のテストにおけるph測定
医療機関 試薬のph調整と体液のph測定
研究機関 実験・研究用溶液のph測定
教育機関 理科の授業におけるph測定
その他 水族館(水槽のph管理)
電力/ガス会社(給水用水のph測定)
水道会社(浄水場の水質のph管理)
警察(血液のph測定)
美容院(コールド液のph調整)
現像所(現像液のph調整)
娯楽/スポーツ施設(プールや温泉水のph管理)
ゴルフ場(土壌のph測定)

製造業(食品)を例に挙げると、チーズやヨーグルトなどの乳製品、缶詰や瓶詰のようなインスタント食品はいずれも一定の品質と安全性が求められるため、ph値の管理を行っています。

ph濃度が変動すると、製品化された食品の味わいや鮮度が変わってしまい、保存期間にも差異が生じることから、出荷・販売前にph値を検査し、異常や問題がないかを確認します。

phメーターを使用する重要性

ものづくりや農業・畜産・水産といった食料生産にかかわる現場、医薬品や化粧品のように安全性が重視される製造現場ではphの管理や調整が必要不可欠です。

製造業や企業だけではなく、商業施設や教育機関などでもphメーターが使用されています。水や溶液は生活と切り離せないものであり、時には血液や唾液についてもphの値を調べる必要があります。

正しい結果を得るためには、phメーターに狂いや誤差がないように校正を施し、正しい方法で機器を使用することが大切です。

押さえておきたい!phメーターの使い方

phメーターは、以下に紹介する3つのポイントを押さえて使うようにしましょう。

①溶液の温度を一定に保つ

溶液の温度を事前に決めておき、適切な状態に保ったうえで測定を行いましょう。

溶液の種類や検査の目的によって適正温度は異なります。恒温槽のように一定温度に保つ設備を併用して測定を行ってください。

②電極の汚れを取り除く

メーターの先端には電極が取り付けられています。この部分が汚れていると正常に測定できないため、作業前にきれいに汚れを取り除いておきましょう。

電極を洗浄したあとは濡れたままにせず、気泡が付着した場合は汚れと同様に取り除いてください。

③比較電極内部液の補充口を開けて内部液を入れる

pH電極には、塩化カリウムを混合した「内部液」が入っています。

内部液はph電極とあわせて交換を行うものですが、比較電極の場合は約1〜3ヶ月が経過したタイミングで補充口を開けて少なくなったところに新しい内部液を補充してください。

内部液は使用していくうちに蒸発し、量が減っていきます。不足したままでは正しく計測が行えないため、検査前にかならず内部液の量が十分かどうか確かめてください。

phメーターで起こりやすいトラブル

phメーターの使用中に起こりやすいトラブルとして、数値が不安定になる・結果が出るまでに時間がかかるといった問題が考えられます。それぞれのトラブルについてみていきましょう。

ph測定中に数値が安定しない

溶液の温度変化や化学反応によってph値が変化すると、数値が一定ではなく誤差を生じます。測定中は溶液の温度を維持し、化学反応が起きやすいものについては反応を避けたうえで測定してください。

また、校正時期が異なるphメーターを2台以上使用すると、条件が異なるため測定結果が変わることもあります。

ph測定結果が出るまでに時間がかかる

ph値の応答速度が遅い場合、測定機器のトラブルが考えられます。電極部分の汚れ・目詰まりがないか確認し、水道水ではなくメーカー推奨の洗浄液や純水を使って洗い落としてください。

それでも応答が遅い場合は、電極交換のタイミングが考えられます。電極が消耗していれば新しいものに交換し、再度測定を行いましょう。

phメーターを使用する際の注意点

phメーターを使用する際、3つのポイントに注意が必要です。

注意点①測定する順番を考える

phメーターは、取扱説明書やメーカーの推奨する方法にしたがって取り扱ってください。溶液を複数測定する場合は、濃度の低いものから高いものへと順番に測定します。

測定・保守・保管・校正という順番で使用を続けることで、測定性能が維持できます。高精度の測定結果を得るためには、溶液のイオン濃度と温度について説明書の記載を守り、記載にない順番や方法で測定を行わないように注意してください。

注意点②粘度の高い溶液は可動スリーブ構造のものを使う

溶液の粘度が高い場合は、可動スリーブ構造タイプのphメーターが適しています。

可動スリーブ構造とは、phメーターの液絡部に可動式のスリーブが取り付けられ、電極を覆う構造のものです。液絡部が洗浄できるため、高粘性の溶液が詰まらず安定的な測定が行えます。

注意点③ph標準液はまとめて作らない

phメーターの精度を維持するためには校正作業が必要です。

校正の際に使われるph標準液は、ゼロ点やスパン点と呼ばれる指標の調整に使われますが、同じ液を繰り返し使わないように注意してください。

関連記事:測定機器を校正する必要と校正を行うタイミング・有効性の立証方法

phメーターを使い終わったあとのポイント

phメーターを使い終わったあとは、次のポイントに注意して機器を取り扱ってください。

ポイント①電極をきれいに洗浄する

測定に使ったphメーターは、水洗いだけでは汚れが落としきれない可能性があります。電極洗浄液に15分程度漬け置きしてから、電極の先端を柔らかいスポンジでこすり洗いして水ですすぎます。

溶液の粘度が高く汚れが落ちにくいときは、中性洗剤または薄い酸を溶かした液に電極を直接浸し、脱脂綿やガーゼでこすります。

ただし、使用上のルールが決まっている場合はその手順に従ってください。洗ったあとは電極が乾燥すると劣化するため、専用の保存液に浸して保湿し、保管してください。

ポイント②専用の保存液を使用する

洗浄後の機器は、電極を乾燥させると消耗が進み、劣化の原因になります。保湿をしなければ精度にも影響するため、専用の電極保存液を使って保管するようにしてください。

電極保存液とは、ph7程度の中性に調整された塩化カリウム溶液です。phメーターの電極が乾燥しないように、この保存液が入ったボトルや保護キャップに電極を浸して保存します。

phメーターの使い方と注意点を押さえよう

今回は、phメーターの概要や使用手順、どのような業界で使われているのかといったポイントを紹介しました。

食品から工業や農業、一般企業に至るまで幅広く使用されている計器で、デジタル式や土壌測定用など用途に応じた製品も販売されています。

手軽に扱えるものも多く、簡易測定に適したコンパクトなメーターも登場していますが、正しい手順を守らなければ精度が落ちる可能性がありますので、メーカーの説明や推奨方法に準じて使用しましょう。