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音圧レベルにおける「A特性」とは? C特性とZ特性の違いと計測方法

音の大小を詳細に計測する場合、「音圧レベル」と呼ばれる水準が指標となります。

音は、音源である物体が振動して発生した波動が空気中を伝わって私たちの耳に入りますが、「特性」と呼ばれる補正によって、より詳細に音の大きさを測定できるようになります。

この記事では、音圧レベルの概要と3つの特性の違い、使い分け方を紹介します。騒音の基準、測定・評価方法と騒音計についても取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。

音圧レベルとは?

音圧レベルとは、音の発生源(音源)から生み出された振動が空気中を伝わるとき、圧力変動の強さを表す指標です。

物理的にどの程度音が大きいのかを示すもので、dB(デジベル)という単位で表記されます。

音圧レベルを測定するためには、人間が聞き取れる最小音圧を20μPa(マイクロパスカル)として、この値を基準にどれほど大きい音かを数式で表現します。

音圧が大きくなるほど大きな音として認識されます。一例として、セミの鳴き声や人間の大声での会話音は80dB程度、自動車のクラクションは110dB(2mの距離の場合)です。

しかし、実際に音を聞き取るときには、人間にとって聞きやすい音とそうではない音が存在します。音には周波数と呼ばれるものがかかわっており、周波数が高い音ほど聞き取りづらくなります。

周波数はHz(ヘルツ)という単位で表されます。人間の耳には20Hz〜20kHz(20,000Hz)までの音が聞き取れるとされますが、加齢によって高い周波数が聞こえづらくなるといわれています。

A特性とは?音圧レベルごとの特性

音圧レベルの測定では、より詳細に音圧を評価するために「重みづけ」と呼ばれる評価方法を加えることがあります。重みづけをしたものがA特性・C特性・Z特性と呼び分けられています。

ここからは3つの特性について確認していきましょう。

A特性

A特性とは、騒音を測定する際に用いる評価方法です。人間の耳にどれだけ聞こえやすいかを考慮し、音圧レベルに補正をかけて騒音か否かを判定するものです。

音圧の強い音でも、人間の耳が聞き取れる20Hz〜20kHz(20,000Hz)の範囲外にあれば、7割程度の音量に減衰して聞こえるとされています。

A特性では、聞き取り可能な範囲外の音については7割の音量として重みづけを行い、実際の生活の中でうるさいと感じる騒音レベルを測定できます。

C特性

C特性とは、人間の聞き取りやすさを考慮せず、大きな音の騒音レベルを把握する目的で使用される評価方法です。

補正の範囲はA特性よりも小さく、平坦な重みづけをして騒音測定を行います。8000Hz以上の高周波や31.5Hz以下の低周波に対して測定を行う際に用いられる指標ですが、現在ではA特性やZ特性よりも使用される機会が少なくなっています。

Z特性

Z特性とは、重みづけを行わず純粋に音圧レベルを測定したもので「Flat(フラット)特性」とも呼ばれています。聞こえやすさや聞こえづらさを考慮せず、実際にどれほど大きな音が出ているかを測定するために用いられる評価方法です。

Z特性は電車・飛行機が通過する場所の近くや滝・海の近くなどの「環境騒音」を測定する際に用いられています。人間の知覚を考慮せず、物理的に測定できる音圧レベルを知るための重みづけです。

A特性・C特性・Z特性の違いと使い分け

A特性・C特性・Z特性の違いと使い分け方は以下のとおりです。

【特性の違いと特徴】

種類

補正の程度

特徴

A特性

最大

人間の聴覚能力を考慮した音圧レベルの測定に使用する

C特性

中程度

大きな音の測定に使用する(※使用機会は少ない)

Z特性

なし

特別な補正を行わず実際の音圧レベルの測定に使用する

A特性はJIS規格の一種であるJIS C1509で規定されており、補正をかける際にはこの規格に準じる必要があります。居住生活に適した場所を把握するための騒音計を使用する場合、このA特性に基づいた数値が出力されます。

Z特性は補正をかけない純粋な値で、現在ではA特性とあわせて使用されています。JIS C1509では10Hz〜20kHz(20,000Hz)と規定されています。

騒音の基準

環境省の規定では、「騒音」は地域を3種類に分けたうえで、昼間と夜間のそれぞれ一定の音圧を超えたときに騒音とみなされます。

環境基本法に定められている環境基準と基準値は以下のとおりです。

【地域ごとの騒音基準値】

地域の累計基準値(昼間)基準値(夜間)
AA(療養施設/社会福祉施設などが集合して設置される地域)50dB以下40dB以下
AおよびB(住宅地など)55dB以下45dB以下
C(住居と併せて商業・工業用に使われる地域)60dB以下50dB以下

上記の基準に加えて、A地域・B地域・C地域と幹線交通を担う道路の近接エリアでは、区分ごとに以下の基準値が設けられています。

【区分ごとの騒音基準値】

地域の区分基準値(昼間)基準値(夜間)
A地域で2車線以上の車線を有する道路に面する地域60dB以下55dB以下
B地域で2車線以上の車線を有する道路に面する地域 C地域で車線を有する道路に面する地域65dB以下60dB以下
幹線交通を担う道路に近接する空間70dB以下65dB以下

※参考元:環境省「騒音に係る環境基準について

騒音の測定・評価方法について

騒音を測定・評価する方法は、騒音が出ている場所に専用の騒音計を向けて行います。スマートフォンアプリでも騒音を測定できるものがありますが、音の感度や規格に基づいた騒音チェックを行う場合は騒音計を使用しましょう。

騒音は、昼間と夜間のそれぞれで測定します。風雨が強い日のように、天候によって騒音内容が変動することも考慮する必要があります。

A特性を利用している騒音計

A特性が使用されている騒音計には、「デジタル騒音計(普通騒音計)」「精密騒音計」が挙げられます。

デジタル騒音計は、画面に数字がデジタル表示される騒音測定器です。A特性による重みづけが可能なものは、人間が耳で感じるうるささを考慮して数字を表示できます。精密騒音計は、建築音響の計測や環境騒音といった産業分野でも利用可能で、オプション機能が豊富です。

A特性は音圧レベルの重みづけ

今回は、音圧レベルの特徴と3つの特性の違い、使い分け方法や騒音の分類について紹介しました。

騒音はdB(デシベル)で表され、A特性やC特性のような重みづけのうえで値を計測しています。地域や環境によって騒音レベルの目安が定義されており、基準値を元に計測すると、どの程度の騒音が出ているか把握できます。

簡易的に騒音チェックができる普通騒音計と、産業分野や研究にも使用できる精密騒音計の違いも比較して、現場環境に適した騒音測定を行いましょう。