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SS(浮遊物質量)とは?SSの種類とリスク・水質の測定方法を紹介

環境保全や汚濁防止の目的で水質を検査するときは、SS(浮遊物質量)と呼ばれる物質量を調べます。

環境省や国土交通省によって基準値が定められており、河川や湖沼、海を汚染することのないように、企業は定期的にSSを調べなくてはなりません。

この記事では、SSの概要と4つの分類、SSと濁度の違いや基準値について取り上げています。

SSがもたらす影響や水質の測定方法についても紹介していますので、検査測定の際の参考にしてください。

SS(浮遊物質量)とは

SS(suspended solids:浮遊物質量)とは、水の中に浮遊している粒径2mm以下の(網目2mmのふるいを通過する)不溶性物質のことです。

不溶性物質の中には、溶解性(溶存態)のSSも含まれており、粒子性SSと区分けされています。いずれも河川や湖沼の底面に堆積すると水が濁る原因となり、光の透過を妨げるため河川にさまざまな影響を及ぼします。

SSには以下の物質が該当します。

【SSに該当する物質】

  • 粘土鉱物由来の微粒子
  • 動植物プランクトン
  • 動植物プランクトンの死骸
  • 下水
  • 工場排水由来の有機物
  • 金属の沈殿物
  • 有機性のSSに吸着された化学物質

SSには、自然由来の粘土鉱物微粒子や動植物プランクトン、工場が近い環境では排水に含まれる物質が含まれます。

SSの種類

SSは水に溶けない浮遊物質の総称で、溶解性SS・粒子性SS・沈降性浮遊物質・揮発性浮遊物質に分けられます。

それぞれの種類について確認していきましょう。

①溶解性SS

溶解性SS(溶存態)とは、小さい順に分子・ウイルス・コロイドが該当します。粒子性SSと区分けするポイントとしては、孔径0.45~1μmのフィルターを通過する成分が溶解性SSと定義されています。

②粒子性SS

粒子性SS(懸濁態)とは、小さい順にバクテリア・藻類・懸濁粒子が該当します。溶解性SSと区分けするポイントとしては、孔径0.45~1μmのフィルターを通過しない成分が粒子性SSと定義されています。

③沈降性浮遊物質(SSS)

沈降性浮遊物質(Settleable Suspended Solids)はSSSという略称で呼ばれ、試料を一定時間置いたときに沈殿する物質です。

具体的には、30分程度静かに置いたあとの試料の上澄みに含まれるSSを、もとの状態のSSから差し引いたものがSSSと呼ばれています。

④揮発性浮遊物質(VSS)

揮発性浮遊物質(Volatile Suspended Solids)はVSSという略称で呼ばれ、SSを強熱した際に揮発する物質のことです。

揮発する物質の主成分は排水に含まれる有機物やプランクトン、バクテリアなどで、VSSを検査することで濁りの中に含まれる有機成分の量や内容が確認できます。

※参考元:国土交通省「SS(浮遊物質量)

SSと濁度の違い

SSは試料となる水の中に浮遊する物質を指し、浮遊物質の量を計量するものです。一方、試料となる水にどの程度濁りが生じているかは「濁度(だくど)」と呼ばれる数値で表されます。

厚生労働省の定義によると、濁度は土壌・浮遊物質・動植物の死骸や組織・鉱物性繊維状物質が混入している水の濁りの程度を表す指標です。

「水がどの程度濁っているか」を数値で確認するためには、液の透明度を測定します。日本国内ではJIS K0101(工業用水試験方法)という規格で濁度の水準が定められています。

SSの基準値

国土交通省と環境省は、SSが河川環境に影響を与えないように、AA・A・B・C・D・Eに分けて基準値を定めています。

SSの量は、試料1リットルの水に含まれる物質量をミリグラムで表します。単位はmg/L(ミリグラムパーリットル)という単位です。

【SSの基準値】

 基準値(mg/L)
 AAABCDE
河川の類型25mg/L以下50mg/L以下100mg/L以下ゴミなどの浮遊が認められないこと
湖沼の類型1mg/L以下5mg/L以下15mg/L以下ゴミなどの浮遊が認められないこと
排水基準200mg/L(日間平均150mg/L)
下水排除基準 

環境省の「水質汚濁防止法」では、公共用水域や地下水への汚染を防止するために、排水基準として200mg/L(日間平均150mg/L)と定めています。

また、環境省では下水道の整備・公衆衛生の向上を図るために「下水道法」を所管しており、下水道法に基づく下水排除基準にもSSの基準値が定められています。

※参考元:国土交通省「SS(浮遊物質量)

SSがもたらす影響

SSの量が多い(数値が高い)場合に考えられるリスクは以下のとおりです。

【SSがもたらす影響】

影響がある場所考えられる影響
水質汚濁・汚れ
地域悪臭・水遊びや遊歩がしづらくなる・水の再利用にコストがかかる・環境汚染
生物魚のえら呼吸の阻害・動植物の死滅・光合成の阻害

SSが増えると、水中の酸素を消費して魚類がえら呼吸をしにくくなるおそれがあります。水中の植物が光合成を行えなくなり、プランクトンも住みにくくなるなど、魚だけではなく水中に住む生態系全体への影響が懸念されます。

水質は濁りが発生し、外から河川や湖沼の中が視認しにくくなるほか、動植物の死骸によって悪臭が発生する場合もあります。

汚れや臭いのある水辺では水遊びや散歩がしにくくなり、汚れた水は海のような広い場所へ流れ込むため、環境汚染のおそれも高まります。SSの量が多い水を再利用するには、高度な浄水設備を備えた施設が必要です。

SSの水質測定方法

SSの水質を測定するには、試料となる水を採取するポリ容器が必要です。臭いがある場合は蓋がついている容器を用意します。

採取した水を持ち帰り、ろ過法または遠心分離法によって固形物だけを取り出し、重さを計ります。2つの方法を詳しくみていきましょう。

ろ過法

ろ過法では、ろ紙とろ過装置を準備します。ろ紙をろ過装置にセットし、紙の上に水を少しずつ注ぎ入れてろ過装置にかけてから、紙の上に残った固形物を乾燥機の中で乾燥させ、ろ紙ごと重さを計測します。ろ紙の上に残った固形物の値が浮遊物質量の重さです。

遠心分離法

遠心分離法は、ろ紙によるろ過が困難な場合に用いられる方法で、遠心分離機に試料水を入れて水と固形物を分離し、その後分離した固形物を容器に移しかえて乾燥させ、全体の重さから容器の重さを引いて計測します。容器の重さを引いて残ったものが浮遊物質量の重さです。

水質の検査と自然環境の保全にはSSと濁度が重要

今回は、SS(浮遊物質量)の概要や種類、SSが増えるとどのようなリスクが考えられるのかについて紹介しました。

工場排水や環境水の分析・管理では、国による法律と地方自治体ごとの条例で定められたルールを遵守しなければなりません。

SSが増加すると環境汚染のリスクが高まるため、定期的に水質を検査・分析する必要があります。また、水がどの程度濁っているかを求める濁度についても、SSとの違いを把握しておくことが大切です。