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デジタル粉塵計とは?特徴・粉塵測定時の使い方と使用上の注意点

粉塵計は、空気に含まれる粉塵量を測定する際に使われる測定機器です。

工場や作業場のように粉塵が発生する環境では、作業者が粉塵にばく露し、「じん肺」などの健康被害を発症するおそれがあるため、労働安全衛生法の「粉じん障害防止規則」に基づいて、粉塵計を使った作業環境測定が行われています。※

この記事では、デジタル粉塵計の基本情報と使い方、粉塵濃度の求め方や使用上の注意点を紹介しています。厚生労働省の新しいガイドラインについても取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。

※参考元:デジタル庁 e-Gov法令検索「粉じん障害防止規則(昭和五十四年労働省令第十八号)

デジタル粉塵計とは

粉塵計は、空気中に含まれる土石・金属・鉱物・炭素などの粉塵濃度を測定する機器で、粉塵濃度計とも呼ばれています

本体にデジタル表示用の液晶画面が搭載されているのが特徴で、測定中は液晶画面にデジタル表示で値が表示されます。

デジタル粉塵計の特徴

デジタル粉塵計はデジタル表示が可能な粉塵計です。電池や交流電源で動作し、デジタル表示のためスムーズに取り扱えます。小型のものも多く、測定したい場所に直接持ち運べるものもあります。

粉塵の測定方法には光散乱方式・光吸収方式・圧電天秤方式などがあり、それぞれ粉塵計として製品化されています。

高感度かつ広く普及している光散乱方式は、吸引口や採気口と呼ばれる検知部分に空気を引き込んで光を照射し、散乱光の強さから粉塵濃度を測定する仕組みです。

本体には電池ケースや電源を引くためのDCジャック、電源スイッチなどが付いており、LEDやUSBの機能が付いているタイプもあります。

デジタル粉塵計の使い方

粉塵計は、高濃度の粉塵に対応したものや、空気で運ばれ鼻や口から吸引されるすべての物質粒子・インハラブル粉塵に対応したタイプも選べます。

測定対象や測定環境に適した機器を選ぶことが大切です。

ここからは、光散乱方式を採用したデジタル粉塵計の使い方を確認していきましょう。

※使い方は一例です。実際の使用方法は製品の取扱説明書やメーカーが推奨する方法に従ってください。

採気口のキャップが閉じていることを確認する

測定前に、デジタル粉塵計本体を机の上など安定した場所に置いて、全体の確認をします。

はじめに、採気口のキャップがしっかりと閉じていることを確認します。採気口を開いたまま測定を始めてしまうと、正しい値が測定できません。

キャップや散乱板の確認中はまだ電源スイッチを入れずに、作動していない状態で始めてください

散乱板が正しくセットされていることを確認する

本体に散乱板が正しくセットされていることを確認します。不十分な場合は、正しい方法でセットし直します。

万が一散乱板に不良がある場合は、そのまま使用せず新しいものに交換してください。

電源を入れ、BG測定を行う

次に、電源を入れて液晶画面の表示を確認します。電源を入れた直後は起動が始まり、測定モードに移行します。

はじめに、粉塵がない状態(ゼロ)を認識させるためのBG測定(バックグラウンド測定)を行ってください。

BG測定では、粉塵計内部に残っているズレを補正して、正しい値が表示できるように調節します。測定中は液晶画面に状態が表示され、測定がすべて終了してから次の作業に移行します。

SPAN測定を行う

SPAN測定(スパンチェック)は、粉塵計の感度を自動的に補正する作業です。

散乱板を規定の状態にセットし、測定モードになってから測定を開始します。BG測定と同じく自動で測定が行われるので、すべての工程が終了してから測定を実施してください。

測定を実施する

SPAN測定で感度補正を行ったあと、測定に移ります。

散乱板を規定の位置にセットし、採気口のキャップを開いてから測定ボタンをオンにします。液晶画面に値やグラフが表示され、セットした時間どおりに測定が行われます。

測定が終了したら

測定中は自動で粉塵量が計算、記憶されます。

工程がすべて終了するまで待機し、終了後にすべての測定が終わったら採気口キャップを閉じて、ズレを補正するBG測定を実施してください。

粉塵濃度の求め方

粉塵濃度は、光散乱方式で次の式から求められます。

粉塵濃度(mg/㎥)=質量濃度変換係数(mg/㎥/cpm)×相対濃度(cpm)

質量濃度変換係数はK値と呼ばれ、以下の式から求めます。

K値=C/R

C:分粒装置を用いた過捕集装置によって得られた粉塵濃度の値(mg/㎥)
R:測定値(cpm)

測定時間が10分、粉塵計の測定値1250カウント、C値が0.15(mg/㎥の場合、R値は1250/10で125(cpm)です。

以上より、K値は0.15/125=0.0012(mg/㎥/cpm)となります。

※K値は粉塵の性質によって異なるため、実際の粉塵を捕集して値を求めておく必要があります。

粉塵計を利用する際の注意点

粉塵計は精密な測定機器です。取扱説明書に従って使用し、以下の注意点も確認しておきましょう。

【粉塵計使用上の注意点】

  • 使用中以外は採気口を閉じる
  • 測定対象以外の粉塵の影響も考慮する
  • 定期的な点検と校正を行う

粉塵計は、空気とともに粉塵を採り込んで内部に光を照射、または誘導現象を起こして粉塵量を計測します。

使用中以外は採気口のキャップやカバーを完全に閉じた状態で、内部に余分な粉塵やホコリが入りこまないように注意しましょう。

BG測定やSPAN測定を行って調整しても、測定中は対象となる種類以外の粉塵が含まれるため、対象外の粉塵の影響も考慮する必要があります。

精密機械のため、使用した粉塵計はBG測定などで定期的に調整し、1年に1回程度は校正や点検を行ってください(メーカーが推奨する頻度でメンテナンスを実施してください)。

関連記事:測定機器を校正する必要と校正を行うタイミング・有効性の立証方法

厚生労働省の新ガイドラインについて

厚生労働省は、令和3年(2021年)4月1日より、「ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライン」を改正し、粉塵の目標濃度レベルの引き下げ・強化を行いました。※

土石や岩石、鉱物の掘削作業では、作業員が常時粉塵の発生する作業に従事することから、発生源に関する措置の強化や換気装置による換気の強化、さらに粉塵濃度の目標レベルを従来の3mg/㎥から2mg/㎥に引き下げています。

新ガイドラインでは、ずい道等の切羽から10m・30m・50mの地点で試料を採取し、測定結果に応じて適切な呼吸用保護具を選択使用することを定めています。

※参考元:厚生労働省「「ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライン」を改正しました」

デジタル粉塵計の種類や特徴を確認して選ぼう

今回は、粉塵計の特徴や種類、実際の測定手順について紹介しました。

厚生労働省のガイドラインにも記載されているように、粉塵による健康被害を予防するためには、定期的な作業環境測定が必要です。

機器選びでは、測定したい粉塵の種類や量を考慮することが大切です。扱いやすさ、操作性、メンテナンスのしやすさも踏まえて、適切な粉塵計を選びましょう。