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身の回りの騒音レベルを把握できる「騒音計」の仕組みと使い方

騒音計は、工事現場や工場などの現場、飛行場や鉄道のような交通機関の騒音を数値で知るために欠かせない測定機器です。

一般ユーザー向けの普通騒音計もありますが、正確で精密な計測結果が必要な場合は精密騒音計がおすすめです。

今回は、「騒音」と呼ばれる音にはどのような種類があるのか、騒音計の仕組みや使用の目的、選び方を紹介します。騒音計測アプリとの違いについても取り上げていますので、騒音計選びの参考にしてください。

騒音はどんな音?

「騒音」とは、広義では騒がしい・うるさい音という意味ですが、以下の意味もすべて騒音に含まれます。

【騒音の定義】

  • 騒がしいため不快感を催す音
  • 振動数が不規則なため不愉快な音
  • その場に望ましくない音・邪魔な音
  • 何らかの目的に対して障害となる音

騒音とは、うるさく感じる大きな音以外にも幅広い音が含まれます。たとえば、静かにしなければならない場所で誰かが声や音を立てたとき、たとえ小さな音量でも騒音に感じられることがあります。

しかし、ほんのわずかな音量であれば騒音とは判断されにくく、一定のレベルに達した音が人の耳にうるさいと感じられます。騒音とされる音の大きさと目安をみていきましょう。

音の大きさと目安について

一般的に、音の大きさはデシベル(dB)という単位で表されます。デジベルはある物理量を基準量との比の常用対数で表した単位であり、さまざまな音をこの単位で表すことができます。

音は音源と呼ばれる発生源をもちます何らかの物体(発生源)が振動すると、そこから音が生まれて空気中を伝わり、耳に届きます。音の強さを数式や公式で表現すると複雑になるため、デジベルを用いて表現しているのです。

一般的に、ヒトの耳には50dBを超える音が騒音として認識されます。さらに60dBを超えると、多くの人がうるさいと感じます。

【騒音値の基準と目安】

音量レベル 感じ方 音の種類
120dB 聴覚機能に支障をきたす会話ができない 飛行機のエンジン・至近距離での落雷
110dB 車のクラクション(前方2mの距離)
100dB きわめてうるさい 電車通過中のガード下
90dB 工場内・パチンコ店内・犬の鳴き声(正面5mの距離)・ゲームセンター内
80dB うるさい 地下鉄の車内・主要幹線道路の周辺(昼間)
70dB 騒々しい社内・人通りのある街頭・ステレオ(夜間・正面1mの距離)
60dB 普通の会話・静かな車の中
50dB 普通 静かな社内・クーラー(室外)・子どもの足音(集合住宅の階下)
40dB 気にならない 深夜の市街地・図書館
30dB 静か 深夜の郊外・ささやく声
20dB きわめて静か 木の葉が触れ合う音・時計の秒針音(前方1mの距離)・録音スタジオ

音の大きさや伝わり方は、発生源の位置や周辺に音が伝わりやすい物体があるかどうかで異なります。一例として、屋外で大きな声を張り上げると90dB程度、布団を叩く音は65dBが目安です。

人間の一対一での普通会話は、約60dBです。騒音と認識されるのは50dB以上のため、防音効果を発揮する壁や設備がなければ、日常の会話でも騒音とみなされる可能性があります。

騒音計とは?

騒音計は、ささやくような小さな音から飛行機の離着陸音まで、さまざまな音のレベルを数値で表す機器です。

機器は音を集めるマイクロホン・騒音レベルの演算部分・指示器・周波数重みづけ特性といった部位で構成されています。

騒音計の仕組み

騒音計自身は手のひらに収まる小型のものが多いですが、集音機能や2つ以上の重みづけ特性で計測できるものなど、高性能な機器が揃っています。

騒音計は、マイクロホンで周囲の音を集めて音圧を電気信号に変換してから内部にわたし、内蔵されている機械が信号を読み取って解析します。解析によって得られた結果を数値として画面に表示する仕組みです。

お夏はアンプを通って増幅されますが、ただ増幅した音を内部に伝えるだけではヒトの耳に聞こえる騒音を正しく把握できないため、フィルターと呼ばれる部分を通り、周波数重み特性の重みづけが行われます。

フィルターを通ってA・C・Zいずれかの重みづけがなされたあとは、演算回路で自動的に重みを対数演算し、dBとして表示できるようにします。

騒音計を使う目的

騒音計の使用は、騒音問題への対策のため・静かな環境下での音の測定・快適な環境かどうかを調べるためといった目的が挙げられます。

それぞれの目的について確認していきましょう。

騒音問題が発生したときに音を測定する

騒音は公害の一種で、振動や悪臭とともに「感覚公害」に属するトラブルです。

工事を担当する責任者は、騒音規制法などの法律や騒音障害防止のためのガイドラインに従って作業管理を実施しなければなりません。※

特に機械や重機を使った工事の音は騒音につながりやすく、マンションや道路といった大規模な対象への工事で騒音が発生したとき、周辺環境にどの程度の影響を与えているのかを騒音計で把握する必要があります。

※参考元:厚生労働省「騒音障害防止のためのガイドライン(令和5年4月改訂)

静かな環境での音を測定する

住環境が快適かどうかを判定する際、静かな場所で騒音値を測定して評価します。

日中は活動時間のため屋内外を問わず騒音が発生しやすい状況で、正しく騒音を判定するためには静かな環境と静かな時間帯を選び、その場の騒音に加えて「暗騒音(あんそうおん)」を測定しなければなりません。

暗騒音はバックグラウンドノイズとも呼ばれ、特定の音の発生源からの騒音を計測するときに、発生源以外から出ている騒音をすべてあわせたものです。

たとえば、マンションやアパートの部屋にいるときに外から聞こえてくる騒音は、自動車の走行音や通行人の話し声、道路工事の騒音などいくつかの種類があります。

騒音は互いに干渉し合うので、道路工事の騒音がどれほどの値なのかを知るためには、工事をしていないときの騒音(暗騒音)を測定する必要があるのです。

快適な音環境であるかを調べる

事業者は法律や規定に基づいて発生源の騒音を測定しなければなりませんが、一般のユーザーも騒音計を使って身の回りの音環境を調べることができます。

環境省の定める基準によると、2車線以上の道路に面する地域は昼間65dB以下、夜間60dB以下の騒音値が適切です(快適と感じられるのは50dB程度)。※

この条件に当てはまっているかを調べるには、昼間と夜間の2回にわたり、自宅内で音を発生させない状態で屋外から入ってくる音を計測します。建物内の騒音を調べる場合も同様に計測します。

※参考元:環境省「大気環境・自動車対策 参考1 騒音に係る環境基準について

騒音計で重要となる設定

騒音計を使用する際、押さえておきたいポイントとして「周波数重み特性」「動特性」「レンジ」の3つが挙げられます。

それぞれどのような意味をもっているのか、確認していきましょう。

設定①周波数重み特性

騒音計で音をそのまま計測しても、人間が耳にする騒音レベルを正確に判断することができません。

そこで、周波数重み特性(周波数重みづけ特性)と呼ばれる特性が騒音計に搭載されます。JIS規格(JIS C1509)に規定されており、騒音レベルの測定時に人の耳の聞こえに合わせて音圧レベルを補正するものです。※

人間の聴覚は周波数が低くなると聞こえづらくなり、1000Hzからは少しずつ聞こえにくく、20Hz以下で聞こえなくなります。反対に20000Hz以上の高周波になっても聞こえなくなります。

重み特性には「A特性」「C特性」「Z特性」があり、市販の騒音計には主にA特性が使われています。

A特性は、工場などの騒音場所を測定する際に使われます。31.5Hz以下の周波数と8000Hz以上の周波数の影響を抑えられるため、人間の聴覚を模した騒音計測が可能です。

関連記事:音圧レベルにおける「A特性」とは? C特性とZ特性の違いと計測方法

設定②動特性

動特性(どうとくせい)とは、電気機械や電子回路、電子機器のもつ特性のひとつです。

騒音計には周波数重み特性のほかに時間重み特性(動特性)と呼ばれるものが付加されています。音圧の実効値を算出するためのものであり、速い動特性は「Fast」(時定数F)、遅い動特性は「Slow(時定数S)」が使われます。

時定数Fは長い時間で、時定数Sは短い時間で時間平均をして算出します。測定対象となる騒音の音圧は変動するため、正確に数値を把握するために動特性をつけて評価します。

時定数Fは短時間で時間平均ができるため、騒音レベルが変化する際にも対応できます。ヒトの耳の時間応答に近づけた値が算出できるため、騒音計を使用する際は時定数Fの使用が一般的です。

時定数Sは騒音レベルがそれほど変動しない対象、たとえば新幹線や鉄道の走行音、航空機の飛行音を測定する際に用いられています。

設定③レンジ

レンジ(測定レンジ)とは、大きすぎる音や小さすぎる音を除いて測定したい場合に、特定の範囲に絞って計測する機能です。

騒音計には自動でレンジを変えて測定できるものと、いくつかの段階にレンジを調節して音を測定できるものがあります。オートレンジタイプの機器は切り替えを行う必要がないため、電源をつけてすぐに実測できます。

騒音計の使い方

騒音計の使い方として、周波数・時間の重みづけをそれぞれ設定し、安定した場所に騒音計を設置します。周辺に反射物がないところを選び、以下の4ステップで測定を行います。

ステップ①周波数重みづけを設定する

騒音計の電源を入れたら、測定のための各種設定を行います。周波数重みづけは電源を入れてすぐに設定する項目です。

簡易騒音計は音を計りたい場所で騒音計を手に持ち、姿勢を保った状態で集音するだけで測定が行えます。

ヒトの耳の聞こえ方に近いA特性など、搭載されている特性レベルを設定します。多くの騒音計ではA特性やC特性といった周波数重みづけが搭載されていますので、必要な重みづけのものを使用しましょう。

ステップ②時間重みづけを設定する

次に、FastまたはSlowの時間重みづけを設定します。音の強さが変化する工事現場での騒音をヒトの耳の聞こえに近づけて測定する場合、周波数重みづけA特性のあとに時定数F(Fast)を設定します。

新幹線の走行音のように変化が少ない環境騒音をそのまま測定する場合は、周波数重みづけA特性のあとで時定数S(Slow)を設定します。新幹線の騒音をヒトの耳の聞こえに近づけて測定するときは、時定数F(Fast)を指定します。

ステップ③騒音計を設置する

騒音計の先に取り付けられているマイクロホンは広い指向性をもつため、あらゆる方向から音を拾います。そのため、できるかぎり音の発生源の方向に向けた状態で測定することが大切です。

マイクロホンが空気や振動を拾いすぎないように、動揺のない安定した場所に置いて集音します。音源があらゆる方向から入る環境では、三脚を立てて騒音計やマイクロホンを取り付け、上の方向に45度傾けて測定します。

ステップ④周囲に反射物がないところで測定する

音はコンクリートや鉄のような固体の面に接すると反射し、音源の方向に戻っていきます。「エコー」「こだま」と呼ばれる現象で、騒音測定においてはコンクリートの壁や大きな車、工事現場の仮囲いのような面を避けて測定します。

「騒音の測定点の設定方法法(JIS Z 8731)」によると、以下の条件で測定を行うことが望ましいとされています。※

【騒音の測定条件】

測定場所 測定位置
屋外 反射の影響を小さくする場合は地面以外の反射物から3.5m以上離れた位置で測定する/地点の高さに指定がなければ地上1.2~1.5mの高さにする
建物の周囲 建物に対する騒音の影響を調べる場合は対象騒音の影響を受けている外壁面から1~2m離れ、建物の床レベルから1.2~1.5mの高さで測定する
建物の内部 壁・その他の反射面から1m以上離れ、騒音の影響を受けている開口部(窓など)から約1.5m離れ、床上1.2~1.5mの高さで測定する

屋外での測定は、風の影響にも注意が必要です。一定以上の風が吹いている環境では防風スクリーンを設置し、マイクロホンが拾わないように配慮しましょう。

※参考元:環境省「廃棄物処理施設生活環境影響調査指針

騒音計の選び方

騒音計は価格・大きさ・重量・機能・オプション機能に違いがあり、必要とする測定レベルに合わせて選びましょう

同じ騒音計でも簡易騒音計・普通騒音計・精密騒音計の3種類があり、メーカーによっては複数の騒音計を取り扱っています。3つの騒音計の違いは次のとおりです。

【騒音計の種類】

種類 特徴
簡易騒音計 価格が安く、手軽に騒音のレベルを確認できる。誤差軽減や重みづけをもたせたものもある
普通騒音計 屋内外での環境騒音測定に適しており、現場での実測に対応できる機能を搭載している
精密騒音計 もっとも高精度で騒音測定が行える。豊富な機能を搭載し、調査や検査にも適している

簡易騒音計は種類が豊富で、数千円から購入できます。一般ユーザーや簡易的に測定したい場合に適していますが、普通騒音計よりも測定性能が劣るため、JIS規格に則って測定する場合は普通騒音計がおすすめです。

普通騒音計は、屋内外を問わず測定が行える一般的な騒音計です。簡易騒音計よりも価格は高くなりますが、工場や工事現場、事務所といった環境騒音の測定が行えます。バックライト機能や測定レンジ機能を搭載しているものも多く、簡易騒音計にはない便利機能が使えます。

精密騒音計は高精度の測定が行える機器です。複数の周波数重みづけ特性に対応し、カラー液晶や通信機能を搭載したもの、測定結果の記録・保存といった便利機能がついているものもあります。

騒音計にはいくつかのレベルがあり、目的に応じて使い分けることもできます。使用環境や目的に合う機器を購入・レンタルしましょう。

騒音計がなくてもアプリで測定できる?

騒音計は集音・解析に特化しているため、正しい測定場所や設置方法を選べば精度の高い結果が得られます。

一方、簡易的な騒音測定に適しているものとしてスマートフォンアプリを使う方法もあります。手持ちのスマートフォンに騒音測定アプリをダウンロードすれば、あとは騒音計の設定と同じく重みづけなどを行って騒音の値が調べられます。

ただし、アプリはスマートフォンのデバイスに依存するため、スマートフォンの集音性能が低いと精度の低い測定結果しか得られない可能性があります。集音のためのマイクもスマートフォンに内蔵されているものを使うため、マイクロホン付きの騒音計と比較すると測定結果が変動する点に注意が必要です。

騒音計の種類や使い方を知って目的に合うものを選ぶ

今回は、騒音の概要や騒音計の仕組み、使い方について紹介しました。

騒音計には簡易騒音計・普通騒音計・精密騒音計といったいくつかの種類があり、見やすいデジタル表示やその他の便利機能を搭載したものもあります。

使用目的や計測環境、求める機能に応じて選ぶことが大切です。

アプリによる騒音計測はスマートフォンのデバイス性能に依存するため、正確な値を出したいときは専用機器の使用をおすすめします。