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絶縁抵抗測定とは?測定の目的・判定基準・絶縁抵抗計の種類を解説

絶縁抵抗測定は、トンネルや電線、道路排水にかかわる公共物や公共設備、電気設備をもつ建物や屋外にある施設などで実施されています。

電気の力で動作する設備は、トラブルが発生しないように定期的な点検が欠かせません。その際、絶縁抵抗測定と呼ばれる点検を実施し、測定結果に応じて対応を行います。

この記事では、絶縁抵抗測定の目的や基準、種類と実施方法を紹介しています。4つの注意点も解説していますので、電気設備の測定について知りたい方はぜひ参考にしてください。

絶縁抵抗測定とは?

絶縁抵抗測定とは、電気を使用する設備の点検作業のうち、電気が外に漏れ出さない能力(絶縁性)を数値で表すための測定です。

漏電による停電や火災トラブルを防ぐためには、電気が外に漏れないように内部で電気を絶縁しなければなりません。

しかし、電気設備に使われている絶縁物は使い続けるにしたがって劣化するため、劣化の程度が大きくなると抵抗の力が弱まります。一定の年数が経過したときは、絶縁抵抗測定を実施します。

絶縁抵抗測定の目的

絶縁抵抗測定は、電気が絶縁体で絶縁され、外に漏れ出していないことを確認するための作業です。

測定の目的は次のとおりです。

【絶縁抵抗測定の目的】

  • 設備の漏電防止
  • 火災・感電事故の防止
  • 設備保全と修理交換時期の確認
  • 施設や環境の安全性の確保

電気設備は正しく電気を通すことで作動します。漏電が起きるとブレーカーが落ちて停電したり、火災や感電事故につながったりするおそれがあるため、定期的な絶縁抵抗測定が必要です。

また、一定期間使用した機械設備は、修理交換の時期を考慮しなければなりません。設備を保全し、修理交換のタイミングを考える際にも、ノイズ検査や電源品質の確認も含めて診断します。

絶縁抵抗測定は電気設備が正しく動作し、安全性が確保されているかを確認するためにも実施されています。長期にわたって使用されてきた設備が劣化していないかを確認し、危険を予防するために行われます。

絶縁抵抗測定の基準

電路の絶縁は、「電気設備技術基準」によって規定されています。電気設備技術基準とは、発電所から使用する場所までの電気設備について、電気事業法に基づいて基準を定めたものです。

「電気設備に関する技術基準を定める省令(電技省令)」第5条第2項では、では、絶縁性能が事故時に想定される異常電圧を考慮して、絶縁破壊による危険のおそれがないレベルでなければならないと定めています。※

絶縁抵抗値は、使用する電圧区分に応じて次のように定められています。

【電路の使用電圧】

電路の使用電圧 絶縁抵抗値
300V以下
対地電圧150V以下(100/200V)
0.1 MΩ以上
300V以下
対地電圧150V超過(三相200V)
0.2 MΩ以上
300V超過(三相400V)  0.4 MΩ以上

※参考元:「平成九年通商産業省令第五十二号 電気設備に関する技術基準を定める省令

絶縁抵抗計の種類

絶縁抵抗計は、電気設備がどの程度絶縁できているかを示す測定器です。

アナログ式とデジタル式の2種類があり、測定値の表示方法が異なります。それぞれの特徴をみていきましょう。

アナログ式

アナログ式絶縁抵抗計は、アナログメーターの目盛りを針が直接指し示すアナログタイプの測定器です。

測定中、初期位置と呼ばれる最初の位置から針が動かなければ良好に絶縁されていると判断できます。デジタル表示に対応していないため、目盛りを正確に読み取る必要がありますが、針が目盛りの中を動くので状況を見渡しやすいというメリットがあります。

デジタル式

デジタル絶縁抵抗計は、画面に測定結果の数値が表示される測定器です。

デジタル式のため、目盛りを読み取る手間がかからずスピーディですが、接触抵抗によってわずかに変化が出る場合があります。数値を読み間違えるリスクが少ないためミスが少なく、ディスプレイがライトで光る機種は暗い場所での作業に適しています

関連記事:デジタル粉塵計とは?特徴・粉塵測定時の使い方と使用上の注意点

絶縁抵抗測定を行う方法

次に、絶縁抵抗測定を行う方法について確認していきましょう。

バッテリーを確認する

はじめに、絶縁抵抗計のバッテリーが十分かを確認します。バッテリーが不足していると十分な結果が得られない可能性があるためです。

測定に使用する機器はすべて電源やバッテリーに問題がないことを確認し、取扱説明書に従って充電や電池の入れ替えを行ってください。

また、絶縁抵抗計には1000Vまでの低圧用、1000Vを超える高圧用があります。電路の圧力に合わせた絶縁抵抗計を使用してください(半導体素子が回路に含まれている場合は100〜250V等の定格電圧を推奨)。

電圧レンジ・接地を確認する

測定場所に応じて電圧レンジを確認、設定します。測定電圧が高すぎると、測定対象の電気設備が破壊されるおそれがあるため、トラブルを防ぐために電圧レンジを適切に設定しましょう。

絶縁抵抗計の取扱説明書には、測定電圧・対象の電気設備や電路の値が記載されている場合があるため、記載内容に従って測定を行ってください(電気設備の絶縁抵抗測定は、JIS C 1302で規定されています)。※

※参考元:日本規格協会「絶縁抵抗計 – JSA Webdesk

測定対象を確認する

次に、ゼロ確認(絶縁抵抗計を短絡状態にして、「0MΩ」と表示されるかを確認する)を行います。

ゼロ確認で抵抗計が正しく動作することを確認してから、測定対象を確認します。電気設備や電路に対しては、停電(電圧がかかっていない状態)で実施します。

測定の実施

安全に測定作業が行えると判断できたら、測定対象となる設備機器や電路に測定リードを当てて絶縁抵抗測定を実施します。

絶縁抵抗測定を行う際の注意点

絶縁抵抗測定を行う際の注意点についても確認していきましょう。

絶縁保護具を必ず使用する

測定者は、感電などの事故に備えて絶縁手袋や絶縁衣を装着してください。事前にブレーカーを遮断し、無電圧状態にすることが必要ですが、測定者自身の安全確保も必要です。

絶縁用手袋は手のサイズに合うものを選び、袖口を折り曲げないようにします。

絶縁性能の劣化につながるため、直射日光や高温な環境に放置しないよう正しく取り扱ってください(万が一破損があれば新しいものに交換したうえで作業を実施してください)。

測定前の機材チェック・清掃を行う

測定前には機材に異常や問題がないかを確認し、汚れている場合は清掃してから測定に入りましょう。

測定部分は乾燥したウエスで拭き取り清掃をしますが、汚れがこびりついている場合はアルコール液またはアルコールと水を1対1で混合した液をつけてウエスで拭き取ってください。

機器を単体として測定する場合は、ブッシングの清掃も必要になります。

絶縁抵抗測定中は対象物を停電状態にする

絶縁抵抗測定では、測定する回路が活線しておらず無電圧・停電の状態でなくてはなりません。

活線していると測定者の安全が確保できず、正しい値が計測できないためです。

電気設備を例に挙げると、まず測定する回路の直上にある遮断器やブレーカーを落としてから検電器などで無電圧になっていることを確認し、アースされているところにクリップを挟むなどしてアースチェックを行い、測定に入ります。

測定後は放電作業を行う

測定後は測定電圧が残留するため、残留している電荷の放電作業を実施しましょう。自動放電機能を搭載している絶縁抵抗計については、取扱説明書に従って放電作業を実施してください。

電気設備の保守点検に欠かせない絶縁抵抗測定

今回は、電気設備の適切な保守・点検や事故防止に欠かせない絶縁抵抗測定について紹介しました。

電気設備は工場や屋外、一般企業などさまざまな場所に使用されているため、絶縁抵抗測定は現場において必要不可欠なものです。安全かつ確実に確認作業を実施するためには、測定者が正しい知識をもって服装や機材を整え、仕様手順にしたがって測定を実施しなくてはなりません。

測定対象に応じた機材選びや手順が異なる点にも注意が必要ですので、絶縁抵抗に関する理解を深めたうえで測定を行ってください。